ここに記載してある内容は、点眼剤についての一般的な回答のため、個々の点眼剤については、この回答に当てはまらない場合があることをご了承下さい。
個別の点眼剤についてのご質問がある場合は、医療機関から処方された医療用点眼剤については当該医療機関へ、一般用点眼剤については製品の製造販売元へお問い合わせいただくようお願いします。
点眼方法について
A.
(1)
手をせっけんと流水でよく洗います。
(2)
下まぶたを指で広げ、少し上を見るように首を傾け、1滴を確実に点眼します。このとき、できるだけ容器を真下にむけて、容器の先がまぶたやまつ毛、目に触れないよう注意しましょう。
(3)
点眼後はまばたきをせず、まぶたを閉じ、あふれた液を清潔なガーゼやティッシュで軽くふき取って下さい。
(4)
そのまましばらくまぶたを閉じるか涙嚢部(目がしらのやや鼻より)を軽く押さえて下さい。
点眼する時に点眼剤が固定できない場合は、点眼剤を持たない手でげんこつをつくり、下まぶたにあて、軽く下にひきます。げんこつに点眼剤を持つ手をのせて点眼することも有用です。
A.
子どもの恐怖心を取り除き、点眼しやすい方法で行って下さい。(例えば、子どもをひざの上に仰向けで寝かすなど)
なお、点眼時に目を閉じてしまう子どもの場合、目の周りを清潔なガーゼやティッシュで拭いてから、目がしら付近に点眼して下さい。点眼後、目を開けさせると薬液が目の中に入っていきます。
なお、点眼時に子どもが動き、容器の先で目を傷つけないように気をつけて下さい。また、子どもが泣いている場合、涙で薬液が流されますので点眼することは避けて下さい。寝ている間に点眼するのも一つの方法です。
A.
医療用点眼剤の場合は、医師の指導および用法・用量に従って下さい。また、一般用点眼剤の場合は、添付文書中に年齢制限がない限り、自分の目の症状や点眼剤のさしごこちなどについて意志表示ができる年齢になってから使用して下さい。それまでは医師に相談して下さい。
用法・用量を遵守するために
A.
添付文書(電子添文)の用法・用量に従って点眼して下さい。医師の指示がある場合はその指示に従って下さい。
1回の点眼量は、確実に点眼できれば片眼1滴ずつで十分であり、それ以上点眼しても、目の外にあふれたり、涙点を通って鼻涙管へ排出されたりします。
ただし、一般用点眼剤は1回1~3滴のものが多く、医療用点眼剤では1回1滴となっているものが一般的です。セルフメディケーションを主体とする一般用点眼剤は、副作用が少なく効果のわかっている成分を、決められた濃度の範囲内で使用しています。そこで、確実に点眼していただき、効果を十分に発揮させるために、1回1~3滴の範囲で点眼量を設定しています。一方、医療用点眼剤の場合、1990年代以前に薬価収載された点眼剤では、種々の臨床試験成績(臨床試験の担当医の経験に基づく結果も含む)に基づいて用法・用量が決定されていたことから、用量が「1回1~3滴」のものもありますが、近年承認された点眼剤は第Ⅱ相臨床試験で用法・用量の検討が行われ、その後実施される第Ⅲ相臨床試験に基づいて用法・用量を決定しています。
A.
添付文書(電子添文)に点眼間隔や順序について記載がある場合は、その内容に従って下さい。ただし、医師の指示がある場合はその指示に従って指導して下さい。特に添付文書(電子添文)の記載や医師の指示がない場合、通常、2種類以上の点眼剤を点眼する場合、5分間以上間隔をあけるように指導して下さい。
間隔をあける理由は、点眼間隔が短いと先に点眼した薬液が、後に点眼した薬液によって洗い流されてしまい、十分な効果が得られないことがあるためです。
A.
添付文書(電子添文)に点眼順序や間隔について記載がある場合は、その内容に従って下さい。ただし、医師の指示がある場合はその指示に従って指導して下さい。水性点眼剤の併用薬として①懸濁性点眼剤、②ゲル化剤等を配合した点眼剤、および③眼軟膏が処方された場合、特に医師から指示がなければ、水性点眼剤の点眼後、①⇒②⇒③の順で点眼するよう指導して下さい。
【水性点眼剤以外の製剤特性と順序設定の理由】
①
懸濁性点眼剤:水に溶けにくいため、水性点眼剤より後に点眼することが望まれます。
②
ゲル化剤等を配合した点眼剤:ゲル化剤等の添加剤を配合して眼表面での滞留時間を延長させた点眼剤であり、他の点眼剤の薬物動態に変化を及ぼすおそれがあるため、添付文書(電子添文)適用上の注意等に、最後に点眼することの注意が記載されています。
③
眼軟膏:水をはじきやすく、眼軟膏の後に他の点眼剤を点眼した場合、その効果が発現しないおそれがあります。また眼軟膏は徐々に吸収され効果発現が緩やかで滞留時間も長いので、最後に点入します。
A.
気がついたときに直ぐ1回分を点眼するように指導して下さい。ただし、次の点眼するタイミングが近いときは、忘れた分を点眼せず、次の点眼時に1回分を点眼するようにして下さい。
また、忘れないようにするには次のような工夫も有効です。
(1)
チェックシートを活用したり、家族が点眼を確認したりする。
(2)
長期間点眼する場合は、食後や就寝前など日常生活の中で点眼を習慣化する。
点眼剤を誤用しないために
A.
点眼剤を使用する前に、名称を確認し、点眼剤であることを確認するように指導して下さい。ただし、目の不自由な方のためには、触って点眼剤を確認できるような工夫(点眼剤を誤用しないためにQ2参照)が有効です。
なお、点眼剤と類似した容器を用いた医薬品として、外皮用抗真菌剤(水虫薬)、外皮用ステロイド剤、点耳剤や内服用下剤などがあります。
A.
点眼剤の袋に使用者名を記入する、また点眼剤に輪ゴムを巻くなどすることにより識別ができます。なお、直接容器に油性ペンで記入すると、ペンの成分が容器を透過して薬液に溶け込む可能性がありますので、容器に直接記入しないように指導して下さい。
点眼剤に異常があるとき
A.
直ちに使用を中止するように指導して下さい。
仮に点眼した場合は、直ちに水で目を洗い、医師・薬剤師に相談して下さい。
使用中の点眼剤にみられる異常の主な原因として、まつ毛やまぶた、目への接触による目ヤニの点眼容器への混入があります。目ヤニが混入した薬液は、微生物により汚染されている場合があります。そのため、点眼時に、容器の先がまつ毛やまぶた、目に触れないように指導して下さい。
目じりや目がしらに容器の先をつけて点眼しないで下さい。(目ヤニおよび涙液などが吸い込まれて汚染の原因となります)
A.
まず、点眼しないように指導して下さい。現品を回収して状況を確認して下さい。異常のある場合は、保管方法を確認し、製造販売元に連絡して下さい。
A.
容器は熱に弱く、高温の場所に放置すると、膨張または収縮が発生し、その結果、容器が変形したり、ノズルが抜け落ちたりすることがあります。このような状態が認められた場合は、点眼剤が高温の状態に置かれた可能性が高いため、使用しないように指導して下さい。
A.
一般用点眼剤は、箱へのシュリンク包装または点眼剤へのピロー包装をしています。そのどちらかが開封されている場合は、他人が使用した可能性があるため、使用しないように指導して下さい。
A.
結晶は薬液が乾いて固まったものと考えられます。
清潔なガーゼやティッシュなどでふき取り、結晶が付着していない状態を確認し、使用するように指導して下さい。
点眼剤の保管に関する注意点
A.
添付文書(電子添文)の「貯法」「取扱い上の注意」に従って保管するよう指導して下さい。保管条件および保管上の注意点は、以下の通りです。
<保管条件>
添付文書(電子添文)で冷所または冷蔵保管等の指示がある点眼剤は、室内に放置すると品質が低下する場合がありますので、凍結を避けて冷蔵庫で保管して下さい(日本薬局方で室温は1~30℃、冷所は1~15℃と定義されています)。
その他の点眼剤は、直射日光の当たらない涼しい場所に保管して下さい。
点眼剤には、光が当たると分解し易い成分が含まれていることがあり、添付文書(電子添文)に遮光の記載がある場合は、必ず付属の遮光袋に入れて保管して下さい。
点眼剤は、通常、外出時も携帯して使用できますが、高温下で長時間暴露される場所に保管しないで下さい。
<注意すべき保管場所>
(1)
子どもの手の届くところに保管しないで下さい。
点眼剤を誤飲すると、含有する有効成分や添加剤が原因で有害な症状を引き起こすことがあるため、子どもの手の届かない所に保管する必要があります。
(2)
暖房器具の近くや、車の中に放置しないで下さい。
高温下で保管すると点眼剤の成分が分解・変質して品質が低下する場合があります。また、プラスチック製の点眼容器は、熱をかけると変形することがあります。
(3)
防虫剤の入ったタンスの中や開封した湿布薬、香りの強い芳香剤の近くに保管しないで下さい。
防虫剤、湿布薬および芳香剤などに含まれる揮発成分は、プラスチック容器を透過する性質があります。これらの揮発成分は容器を透過して薬液に溶け込み、点眼時に刺激を感じることがありますので、防虫剤、清涼化成分を含む開封した湿布薬や芳香剤の近くに保管しないで下さい。
(4)
湿気の多いところに保管しないで下さい。
洗面所や浴室などの湿気が多い場所では、微生物が繁殖しやすく、点眼剤の汚染につながる可能性があるため、保管しないで下さい。
A.
一度凍結した点眼剤は、成分が変化している可能性があるため、外観の変化の有無にかかわらず使用しないように指導して下さい。
冷蔵庫のチルド室やパーシャル室、冷気の吹出口の近くに保管すると凍結する場合がありますので、注意が必要です。
A.
冷蔵保管が必要な点眼剤以外は、通常冷蔵庫に保管する必要がありません。一方、冷蔵保管が必要な点眼剤は、一般的に室内で保管すると性状が変化して品質が低下する場合があります。
(各製品の添付文書(電子添文)の記載内容に従い、指定の条件で保管して下さい)
医療用点眼剤の添付文書(電子添文)の貯法、取扱い上の注意などには、以下のような具体的な保管温度や条件が記載されています。
・10℃以下に保存(遮光)
・2~8℃、遮光
・凍結を避け冷所に保存すること、外箱開封後は遮光して保存すること
・冷暗所保存、禁凍結
・遮光、冷所保存
・室温保存
なお、日本薬局方では室温は1~30℃、冷所は1~15℃と定義されています。
A.
点眼剤には、光に当たると分解し易い成分が含まれている場合があります。遮光袋が付属している場合は、品質を守るために点眼剤を必ず付属の袋に入れ、直射日光を避けた場所に保管するように指導して下さい。遮光袋を紛失した場合には、光が透過しない袋や箱等に入れて保管して下さい。
A.
外観上、容器や薬液に変化が認められない場合であっても、自動車内に放置した点眼剤は使用しないように指導して下さい。
自動車の中に放置した点眼剤は、液温が30℃以上になりやすく、長期間放置すると70℃以上に上昇する場合もあります。高温下で保管すると点眼剤の成分が分解・変質して品質が低下することがあります。
A.
開封後は使用方法・保管方法を守り、適切な期間内(医療用点眼剤は1ヶ月以内、一般用点眼剤は3ヶ月以内を目安)に使用するように指導して下さい。薬が残った場合、保管しないで廃棄して下さい。
ただし、点眼剤には、主成分の安定性又は使用中の汚染の低減を考慮して、開栓後の使用期間と保存場所(冷所保存、冷蔵庫保存など)を表示している場合があります。
この際、開封日を忘れないために、点眼剤の袋または箱に開封日を記載する工夫も有用です。
なお、点眼剤のラベルまたは箱に表示されている期限は、未開封状態での点眼剤の品質を保証する期間です。
コンタクトレンズ装用時の注意点
A.
点眼剤にはコンタクトレンズを装用したまま使用できないもの(コンタクトレンズを外してから使用するもの)と、コンタクトレンズを装用したまま使用できるものがあります。パッケージや添付文書(電子添文)の効能・効果、使用上の注意などを確認して下さい。コンタクトレンズの種類※・材質によっては、点眼剤の成分を吸着する場合があります。製品について不明な点がありましたら製造販売元にお問い合わせ下さい。医療用点眼剤については、添付文書(電子添文)の適用上の注意の記載や医師の指示に従って下さい。
※ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ、カラーコンタクトレンズなどがあり、それぞれ材質も異なります。
A.
コンタクトレンズを装用したまま使用できるコンタクト用人工涙液などは、コンタクトレンズ未装用時でも使用することができます。
A.
点眼した後にコンタクトレンズを再装用する場合は、添付文書(電子添文)に点眼後のコンタクトレンズ再装用までの時間の記載があれば、その内容に従って下さい。記載がなければ、十分な時間(5分以上を目安)をあけて再装用するよう指導して下さい。
また、コンタクトレンズの汚染に注意して取り扱うように、手指の洗浄などを指導して下さい。
緑内障患者への注意点
A.
緑内障治療中の患者さんが、緑内障治療薬以外の一般用点眼剤を含む他の点眼剤や薬剤を使用する際には、医師に相談して下さい。
添付文書(電子添文)に閉塞隅角緑内障・急性閉塞隅角緑内障に禁忌と記載されている薬物は多数存在し、その大部分は向精神薬や催眠鎮静剤などで、眼圧を上昇させる恐れがあります。
抗コリン作用や交感神経刺激作用は散瞳をもたらし、特に閉塞隅角、狭隅角や浅前房など解剖学的要因がもとにある場合、この散瞳によって更に隅角が閉塞されやすく眼圧が急激に上昇し、急性発作が誘発される危険性があります。
一方、閉塞隅角緑内障であっても急性発作を起こさないようレーザー治療や手術などの外科的処置を受けている患者さんには緑内障禁忌薬は問題ないと考えられています。よって、これらの薬物が閉塞隅角緑内障の患者さん全てに禁忌であるというわけではありませんので、緑内障治療薬以外の点眼剤や他の薬剤を使用する際には、医師に相談して下さい。
ドライアイ患者への注意点
A.
ドライアイは、目を保護している涙液層が不安定で、涙が蒸発しやすく、角結膜が障害を受けやすくなっています。涙液の産生を抑える点眼剤は症状の悪化を招く恐れがあります。また、点眼剤、洗眼薬に含まれる保存剤は角結膜などに障害を及ぼす恐れがあります。他の点眼剤を使用する前には医師に相談して下さい。
その他
A.
点眼剤には添加剤を、以下の理由により配合しています。
・医薬品の薬効を十分に発揮させる。
・水に溶けにくい成分を溶けやすくする。
・品質を安定化させる。
・使用感を改善する。
添加剤は眼組織への薬物透過性や使用感に影響します。また、点眼剤には着色だけを目的とした添加剤を使用することは認められていません。
点眼剤に用いる代表的な添加剤とその機能は以下のとおりです。
(1)
等張化剤
薬液が結膜嚢に入ったとき、最初に接触するのは涙液です。薬液の刺激感などの不快感を軽減するためには、涙液に近い浸透圧を持つことが望ましく、浸透圧を涙液と等張に補正するために塩化ナトリウムやグリセリンなどを使用しています。
(2)
緩衝剤
薬液のpH変化を防ぐために配合します。緩衝剤には、リン酸やホウ酸などを使用しています。
(3)
保存剤
点眼剤は無菌的に製した製剤ですが、繰り返し使用することが一般的で、微生物に汚染される機会が多くあります。したがって、微生物汚染を防ぐために保存剤を配合します。ベンザルコニウム塩化物やパラベン類などを使用しています。
(4)
安定化剤
点眼剤の成分の酸化や加水分解などによる変化するのを防ぐために安定化剤を配合します。酸化防止の目的でエデト酸塩や炭酸水素ナトリウムなどを使用しています。
(5)
粘稠剤
薬液に粘性を持たせるために配合します。薬液に粘性があると、結膜嚢での滞留性が高まり、効果の持続性や眼組織への移行性が向上します。また、滞留性が高まると、うるおい感が持続し、使用感の改善につながることもあります。粘稠剤にはヒプロメロースやヒドロキシエチルセルロースなどを使用していますが、添加量によっては霧視やべたつき感を生じる事もあります。
A.
点眼剤用保存剤として、ベンザルコニウム塩化物などの逆性石鹸類、クロロブタノール、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)類およびソルビン酸などが単独あるいは組み合わされて配合されています。用法・用量に従って点眼した場合の安全性は、担保されています。
しかしながら、1回の点眼滴数や点眼回数を必要以上に増やすと、角結膜上皮障害が発現する可能性がありますので、用法・用量に従って点眼することが大切です。
A.
点眼された薬液は涙点から鼻涙管を通って鼻腔に排出されます。鼻腔から喉を流れる際に薬液の味(苦味や甘味)を感じることがあります。
また、点眼後にしばらくまぶたを閉じ、目がしら(涙嚢部)を押さえることによって、薬液が鼻腔を通って口の中に入るのを軽減する可能性があります。
A.
1回使いきりタイプの点眼剤は、保存剤が配合されていないため、開封後、微生物汚染を受ける可能性があるからです。
A.
懸濁性点眼剤は、横置きやキャップを下にすると、容器底面に沈降した粒子が空隙面の空気層にさらされて容器内表面に付着・固着する場合や粒子が凝集してノズルの穴に詰まる場合があるため、キャップを上にして立てた状態で保管して下さい。
A.
有効成分を溶解する前は、室温で比較的長期間保管できますが、有効成分が水溶液中で不安定なため、貯法に従って保管して下さい。定められた期間が経過した点眼剤は、使用しないで廃棄して下さい。
作成:公益社団法人東京医薬品工業協会点眼剤研究会 関西医薬品協会点眼剤研究会
2022年12月 第2版