はじめに
本邦で製造販売承認されている医療用点眼剤は約380品目存在(2013年1月時点 薬価一覧より)し、眼科医療の場でお役立ていただいています。
それら医療用点眼剤はどのように製剤設計され、製造されているかをご理解いただくために、本コンテンツを作成いたしました。
医療用点眼剤の製剤設計には医薬品として「有効性」、「安全性」、「安定性」、製造には「高品質」が求められます。
ここでは「医療用点眼剤の製剤設計」と「医療用点眼剤の製造」について、解説します。
1.医療用点眼剤の製剤設計
医療用点眼剤の製剤設計では、まず、①有効成分の物性(溶解性、安定性など)を調べ、②どのような剤形の点眼剤(水性,懸濁性,用時溶解,油性)又は眼軟膏剤にすべきかを決定します。その後、③必要に応じて安定化剤、等張化剤、防腐剤などの添加物を選定し、各種安定性を検討することで、最終的な処方を決定します。
①医療用点眼剤の製剤設計
点眼剤は、剤形を決定するため、有効成分の水に対する溶解性と、水溶液中での安定性を検討します。
②点眼剤の剤形
点眼剤は有効成分の水に対する溶解性と水溶液中での安定性に応じて剤形を決定します。
一般的には有効成分が水に溶けやすく、安定である場合は水性点眼剤。水に溶けやすいが、不安定である場合は用時溶解点眼剤。水に溶けにくいが、安定である場合は懸濁性点眼剤。そして水に溶けにくく、不安定である場合は油性点眼剤/眼軟膏剤となります。
③添加物
点眼剤には有効成分以外にも様々な添加物が配合されています。主な添加物は下表のとおりです。
2.医療用点眼剤の製造
医療用点眼剤は、安全に使用していただくため、高品質な製品を製造することと、それを担保するための厳格な検査が求められます。
製造・検査における特筆すべき点を紹介します。
①使用する水の条件
点眼剤の品質に影響する水は微生物や微粒子などを含まない高い純度の水が用いられます。水としては「精製水」または「注射用蒸留水に匹敵する水」を用います。
②空気の清浄度
医療用点眼剤の製造は、ろ過滅菌等により無菌化された充てん液を容器に充てんします。 この充てんエリアは、グレードAと呼ばれ、手術室と同等またはそれ以上の清浄度を維持し、さらに微生物モニタリングを実施し管理しています。
解説:
1立方メートル中における空気中における浮遊微粒子の数により、
少ない環境からグレードAからDまでに分類される。
③品質検査
高い品質を保証するために、工程検査と、無菌試験をはじめとする出荷に必要な規格試験を実施します。